
近年、猛暑が続く夏の日々は、我々の生活に大きな影響を及ぼしています。特にこれから新たに家を建てる方々にとって、夏の暑さ対策は必須の課題です。
しかし、暑さ対策のためにエアコンを部屋ごとに設置し、全力で稼働させるだけでは解決策とは言えません。たしかに一時的な涼しさは提供されますが、環境への負荷、それから現在の日本におけるエネルギー供給事情を考えると光熱費の負担も重くのしかかってくるでしょう。
本記事では、これから家を建てる方々のために、「夏涼しい家」を実現するために効果的な3つのポイントについてお話していきます。新たな住まいで心地よく過ごすための参考にしていただければ幸いです。
「夏涼しい家」の重要性は年々高まっている
出典:国立環境研究所「過去100年間の気温の変化」
上図は日本の平均気温の変化を表したグラフです。過去100年間で平均気温は約1.3℃も上昇していることが分かります。皆さんも子どもの頃と比べて夏の暑さがつらくなったと実感しているかもしれません。
地球温暖化などの影響で今後も夏の暑さは増していくと予想されています(※)。これから家を建てる方は、数十年後の夏の暑さを見越した上での住宅設計が求められるのです。
※参考:環境省「気候変動影響への適応」
“日本一暑い町”として知られる埼玉県熊谷市における最高気温の推移
出典:埼玉県気候変動適応センター「埼玉県における気温の推移」
上図は埼玉県の熊谷地方気象台で観測された年間最高気温の推移を表したグラフです。長期的な視点から見ると、過去100年間で3℃以上も最高気温が上昇していることが明らかになります。これは気候変動の影響を如実に示すものであり、その影響は私たちの日常生活、特に住環境に大きな影響を及ぼしています。
夏の暑さへの具体的対策は?
扇風機という選択肢もありますが、最近ではエアコンが第一選択という方も多いと思います。たしかにエアコンを部屋ごとに設置し全力で稼働させることで温度を下げることは可能ですが、現在の日本のエネルギー事情などを考慮すると、光熱費の負担も大きくなり、CO2の排出など環境への負荷増大も避けられません。
そこで埼玉県に拠点を置く「さいが設計工務」では、「自然の力も借りつつ高断熱・高気密性能により、住宅全体を夏は常に涼しく、冬は常に暖かく」という考えのもと家づくりを行っています。
これから住宅を建てる方は、ぜひ夏の暑さを和らげる家づくりを参考にしてみてください。
注文住宅における夏の暑さ対策に有効な3つの工夫
住宅の快適さを保つためには、暑さ対策が必要不可欠となります。そのために最も重要なのが「高気密・高断熱性能」です。これらは寒い冬の暖房効率を保つために必要というイメージが強いかもしれませんが、実は暑い夏にもその効果を発揮します。
また、夏の不快さを引き起こすのは高温だけではありません。湿度も大きな要素となります。高湿度はカビの発生を助長し、住居内の健康環境が損なわれます。そこで調湿作用に優れた自然素材の利用が湿気対策には有効です。
加えて、住宅設計においてはパッシブデザインという自然の力を最大限に利用する設計思想にもメリットが多くあります。
ここからは暑さ対策として有効な3つのポイントを深く掘り下げて解説していきます。
なお、これらのポイントは全てさいが設計工務で標準仕様として採用されています。
「夏涼しい家」を実現するためにおすすめの3つの工夫
1.高気密・高断熱
2.自然素材の利用
3.パッシブデザイン
1.高気密・高断熱
「夏涼しい家」を実現するためにはまず高気密・高断熱の住宅性能が非常に大切です。高気密・高断熱というと、冬の寒さに対してのものでは?と思われる方もいるかもしれませんが、それだけではありません。高気密・高断熱であることは、夏の暑さに対しても絶大な効果を発揮します。
高気密・高断熱の大きな特徴のひとつが「室温を外に逃さない」ことです。室温とは暖かい空気のことだけではなく、当然涼しい空気のことでもあります。エアコンで冷やされた涼しい空気を家の中に閉じ込めることで、快適な夏を過ごすことが可能になります。加えて、夏の太陽光を遮る工夫を行うパッシブデザイン設計との併用によって室温上昇を防ぎ、より室内を涼しい環境に保つことができるのです。
高気密・高断熱の数値基準とは
「高気密・高断熱」と言っても実は明確な基準はありません。各住宅メーカーが独自の基準を設けて「高気密・高断熱」と呼んでいるのが現状です。しかし、さいが設計工務では、明確な数値で住宅性能を示し、証明のための検査も複数回行っています。
<さいが設計工務の断熱・気密性能基準>
断熱性能:UA値0.30W/㎡K以下 断熱等級6 一次エネルギー消費量等級6
気密性能:C値0.3㎠/㎡以下 中間・完成時全棟計測(2回計測)
高気密・高断熱を謳っているのに実際住んでみたら全然違ったとならないためにも、これから住宅を建てようと検討されている方はぜひ高気密・高断熱性能の数値基準や検査について注意を払っておくと良いでしょう。なお、高気密・高断熱の住宅性能については別記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:高気密・高断熱の快適な注文住宅を提供する埼玉の工務店|さいが設計工務
2.自然素材の利用
「夏涼しい家」を実現するためには気温だけではなく、湿度にも注意を払わなければいけません。そこで有効なのが、調湿効果に優れた自然素材の内壁です。
なお、さいが設計工務では、呼吸する壁材と言われる「ルナファーザー」と自然素材100%のホタテ漆喰塗装「ルナしっくい」が組み合わさった内壁を採用しています。
『ルナファーザー』
環境先進国ドイツで生まれた、人と環境に優しい塗装下地壁紙です。紙のパターンと色の組み合わせで、インテリアを思いのままに演出できるので、ヨーロッパで100年以上にわたり愛用されています。自然素材の持つ通気性や透湿性に優れているため、結露やカビの発生を抑えます。
『ルナしっくい』
原料のホタテの貝殻は、ポーラス(孔)が大きく詰まりにくいため、効率的に臭いの分子が吸着され、高い消臭効果が長期にわたり続きます。また、ホルムアルデヒドなどの有害VOC(揮発性有機化合物)も吸着されるため、シックハウス症候群などの不快な症状を緩和します。さらに、調湿効果もあるため、結露やカビの発生を低減します。
参考:日本ルナファーザー㈱HP
これらの内壁は、人工化学物質を使っていないため、空気環境を悪化させません。自然素材の内壁は、室内の空気をいつでも新鮮な状態に保つ助けとなります。また、通常のビニールクロスなどと異なり、一度貼れば基本的に張替えの必要はありません。再塗装は7〜8回程度可能なので、メンテナンスやリフォームでは、そのまま塗り重ねるだけです。地球環境や暮らしに優しいだけでなく、経済的でもあります。
調湿効果のある無垢材フローリング
加えて、湿度調整のためには暖かいぬくもりのある無垢材フローリングも有効です。はだしで歩いてみれば分かるのですが、無垢材の床はとにかく爽快です。自然素材は身体にとても優しいので、子どもが床でゴロゴロしても安心なうえ、木が柔らかいので足が疲れにくいという特徴もあります。また、無垢材フローリングは合板フローリングと比べて、約8倍の調湿機能を持っています。数年で張替えが必要になる合板フローリングと異なり、無垢材フローリングは、最低で30年〜50年、きちんとメンテナンスをすれば孫の代まで使えるほど、長持ちする素材です。
これら自然素材を家づくりにふんだんに利用することで、住宅内の湿度がうまくコントロールされ、ムシムシ&じめじめしない快適な夏を過ごせます。
3.パッシブデザイン設計
パッシブデザイン設計という名前を初めて目にする方もいるかもしれません。パッシブ(passive)とは「受け身の、受動的な」を意味します。つまり受け身のデザイン、住宅設計においては自然エネルギー(太陽光、風、熱など)を最大限に活用し、エネルギー効率を高めつつ快適な生活空間を創り出す設計思想のことを指します。パッシブデザインは、環境先進国ドイツで生まれた設計手法です。自然の風を通りやすくしたり、太陽光を効果的に利用したりすることで、機械的な設備(エアコンや照明など)に頼ることなく、快適な室内環境を実現します。
「夏涼しい家」を目指すために、さいが設計工務ではパッシブデザイン設計の中でもとくに日射遮蔽を重視しています。夏の暑さは主に外からの日射によって引き起こされます。高性能な窓ガラスや室内ブラインドで日射熱を遮ることは可能ですが、それだけでは不十分です。やはり、窓の外で熱を遮る工夫が必要になります。
環境先進国ドイツでは、より効果的な日射遮蔽策として屋外ブラインドが主流となっています。さいが設計工務が採用する外付けブラインドは、窓の外で日射エネルギーの>約80%を遮断可能です。加えて、軒や庇(ひさし)の設計を工夫することで「夏の日射は遮り、冬の日射は取り入れる」という、自然と調和した住宅設計を実現します。
なお、パッシブデザイン設計については別記事でも触れておりますので、興味のある方はぜひご一読ください。
関連記事:低燃費住宅を実現するための3つの重要な住宅性能とは?
お客様の声(施工事例)
最後に「夏涼しい家」を実感されたさいが設計工務のお客様の声(施工事例)をご紹介します。実際の電気料金も公開されているため、ランニングコスト算出の参考にもなると思います。
埼玉県鶴ヶ島市の施工事例 | エアコン1台の稼働で快適に過ごせる家
施主様とは「エアコン1台で、家族全員が快適に過ごせる家」をテーマに間取りを一緒に考えたそうです。リビングと大きな吹き抜けを家の中心に据え、住宅全体の空気循環などを考慮し間取りを決めたところ、夏涼しく冬暖かい住宅が完成しました。
実際にエアコンの使い方も変わったようです。夏は、エアコン1台の冷房を設定温度28度でつけっぱなしにしておくことで、家全体が快適になっているとのこと。
ほんとに?と思われる方もいるかもしれませんが、パッシブデザイン設計や自然素材を家づくりに取り入れることで、そもそも家自体が何もしなくても夏でも涼しい環境になります。
加えて、空気循環のための扇風機やサーキュレーターを併用することで、1台のエアコンの効果を最大限発揮することができるのです。
また、施主様によると、光熱費も賃貸(1LDK)の時よりも低く抑えられているとのこと。以下の施工事例のページでは、具体的な電気代についても公開されているため、ぜひ参考にしてみてください。
施工事例:エアコン1台の稼働で快適に過ごせる家
まとめ:注文住宅において夏の暑さ対策は必須の課題です
本記事では「夏涼しい家」を実現するため工夫すべき3つのポイントについて解説してきました。
1.高気密・高断熱
2.自然素材の利用
3.パッシブデザイン
記事のはじめでも紹介したように、今後日本の気温はますます上昇していくでしょう。これから、住宅を建てる方にとって夏の暑さ対策は必須の課題と言えます。本記事で紹介した3つのポイントを参考に、快適で心地よい住宅をぜひ実現してください。
筆者プロフィール 【フリーランスライター:武田有】父が一級建築士であることから、幼少期より建築業界に親しみがあるが、自身は大学で数学を学ぶ(専門は位相幾何学)。現在はWEB業界で仕事をする一方、ライターとして金融分野や教育分野など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味のDIYや電気工事士の免許を活かし、一般の家庭が抱える住宅の悩みや要望にお答えするコンテンツを提供します! |