
「暖房費がかさむのでどうにかしたい」
「エアコンやストーブを使っても部屋が暖かくならない」
「朝起きると結露で窓がびっしょり濡れている」
「新築なのになぜか家が寒い」
このような家の寒さに関する悩みは多いものです。根本から解決するためには、家の断熱性・気密性を向上させることに行き着くのですが、大掛かりな断熱リフォームは多額の費用もかかります。
そこで本記事では、寒い家を暖かくする方法について寒さの原因や寒さが引き起こすさまざまな問題に触れながら、今すぐにできる寒さ対策を紹介します。
また記事後半では、これからマイホームを建てようと考えている方に向けて、新築時に重要視すべき断熱性と気密性についても詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
家が寒いと起こる問題とは
家の寒さは暮らしの快適性はもちろん、健康面や経済面にも大きな影響を及ぼします。
ヒートショック
ヒートショックとは、大きな温度差により血圧が急激に変動し、その結果、心筋梗塞や脳卒中が発生する危険のことを指します。
住宅内におけるヒートショックは主に、暖かい部屋から冷たい部屋への移動時に起こります。
たとえば、暖房で暖められたリビングから寒々とする脱衣所に移動し熱々のお風呂につかる、こうした急激な温度変化を経験することで身体が大きなダメージを受け、気を失ってしまったり、身体をうまく動かせなくなって転倒したりといった事態が起こるのです。
断熱性や気密性に優れていない住宅の場合、脱衣所やトイレなどの温度が周りの部屋と比べ極端に低いことがあるため、ヒートショックが起こりやすい状況になっていると言えます。
なお、ヒートショックは病名ではなく現象の名前であるため、ヒートショックが原因で毎年どのくらいの方が亡くなっているのか正確なデータはありません。しかし、東京都が公開する入浴時の死亡者数の統計データを確認すると、入浴中に何らかの原因で亡くなる方は夏季に比べ冬季は何倍にも増えることが分かります。
東京都保健医療局「東京都23区における入浴中の死亡者数の推移」を基に作成
こうしたデータからも、家の寒さは暮らしの快適性を損なうだけでなく、重大な健康被害を及ぼす可能性があることがわかっていただけるのではないでしょうか。
なお、ヒートショックの詳しいメカニズムやすぐにできる対策に関しては次の記事で詳しく解説しています。
高齢の家族が寒い家に住んでいて心配という方などはぜひ参考にしてみてください。
関連記事: ヒートショック対策記事 (納品済み、公開前)
風邪や喘息などのリスク増大
ヒートショックのリスクが高いとされるのは、主に65歳以上の高齢者や高血圧、糖尿病、不整脈などの持病を持つ方ですが、特に小さな子どもを持つ家庭にとって心配なのは家の寒さが風邪や喘息、アレルギーなどを引き起こさないかという点ではないでしょうか。
近畿大学建築学部の岩前篤教授は、住宅の断熱と健康の関係について研究を行っています。
岩前教授が2009年に全国のおよそ24,000人の新築の戸建て住宅に転居した人を対象に行った調査結果によると、転居後の断熱性能が高いほど、喘息やのどの痛み、アトピー性皮膚炎などの症状改善の割合が高いとわかりました。
参考:ぜんそくやアトピーも 断熱性の高い家で9つの症状が改善 - ウェザーニュース
つまり、住宅の断熱性能と風邪や喘息などの健康状態には相関関係があるということです。
「少し寒いくらいの方が身体を鍛えられて良い」
なんて言葉を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、このように寒さと健康状態には密接な関係があるため、家族の健康のためにも住宅の寒さ対策は必須だと言えます。
光熱費の負担増大
家の寒さは健康面だけでなく経済面にも大きな影響を及ぼします。
一般社団法人住宅生産団体連合会が作成した「快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」によると、住宅の断熱性能によって以下のように光熱費に大きな差が出ることがわかります。
出典:快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅※年間光熱費は東京23区(地域区分6)の場合です。
※太陽光発電による売電は含みません。
※各数値はシミュレーション用に試算したもので、実際の光熱費を保証するものではありません。
上記表から年間光熱費は「これまでの住宅」と「省エネ住宅」では約6万円もの差、さらに「ZEH基準相当の高度な省エネ住宅」との差に至っては12万円以上にもなることがわかります。なお、暖房の使用機会が多い寒冷地であればさらに差は広がりますし、光熱費が値上がりする最近の状況を考えると差は今後より開いていくだろうと考えられます。
このように、家が寒いこと、つまり断熱性能に劣る住宅には、光熱費の負担増大という大きなデメリットがあるのです。
家が寒い主な原因は?
家が寒いということは、外部の冷たい空気が家の中に流入しやすく、かつ家の中で暖めた空気が外部に流出しやすいということです。
熱の出入り口として考えられるのは、屋根や床、外壁、窓、玄関、換気口などですが、その中でももっとも大きな割合を占めるのが「窓」です。
熱の出入りがもっとも多いのは「窓」
YKK APのシミュレーションによると、冬に家の中から流出する熱の50%は窓からだということです。
出典:快適な家づくりにはガラスの断熱化が大切 | かしこいガラス選び | YKK AP株式会社
もちろん窓以外にも屋根や床、換気口、外壁などからも熱は出入りします。しかし、屋根や床、外壁などは断熱材の入れ替えなど本格的な断熱リフォームが必要となるため、手間やコストの負担が非常に大きくなります。
一方、窓であればコストを抑えながら寒さ対策がしやすく、かつ熱流出割合が高いため効果も出やすいというメリットがあります。したがって、まずは「窓」に焦点を当てて寒さ対策を取ろうという方針がベストです。
寒い家を暖かくする4つの方法
寒さ対策というと、ストーブなど暖房器具を新たに購入したり気密テープですきま風対策をしたりするなど今すぐにできる有効策もあれば、床下や天井に断熱材を入れるリフォームなど大掛かりなものまでさまざまな形があります。
その中からどんな対策を取るべきか考えたときに、やはりコストや手間をできるだけ抑えながら効果は最大化したいというのが率直なところではないでしょうか。前章「家が寒い主な原因は?」で見たように家の中において熱の出入りがもっとも多い箇所は「窓」です。この窓に対して取れる有効策を、比較的手軽に行えるものから少し手間はかかるが効果が高いものまで、いくつか紹介します。
手軽に購入できる断熱アイテム
もっとも手軽に行える窓断熱の方法は、断熱フィルム(断熱シート)や「プチプチ」と呼ばれる気泡緩衝材を窓に貼る方法です。
プチプチや断熱フィルムはホームセンターや100円ショップでも売られており、貼り付け方法も簡単なため、今すぐに行える寒さ対策となります。
手間やコストの点では優秀ですが、効果はさほど高いとは言えず、ガラスのタイプによっては熱割れを起こす可能性もあるため注意が必要です。
また、プチプチに関しては見た目もあまり良いとは言えません。それから、外の景色が見えなくなるという点もデメリットです。
なお、プチプチや断熱フィルムと比べると多少コストは上がりますが、断熱効果のあるビニールカーテンを導入するという方法もあります。
ビニールカーテンは既存のカーテンと併用でき、プチプチや断熱フィルムと比べるとより高い断熱効果が期待できますが、デメリットとしてやはり見た目が悪くなってしまう点やビニールのため臭いが気になる点が挙げられます。
プラダン二重窓
DIYの経験がある方におすすめしたいのが「プラダン二重窓(内窓)」の設置です。
プラダンとは、ポリプロピレン樹脂(PP)を原料としたプラスチック製のダンボールのことです。
プラダンはダンボールのように中に空気の層を形成するような構造になっており、断熱効果が高いとされています。このプラダンを使って簡易的な内窓を作ることで、窓からの熱の流入と流出を効果的に防げるのです。
プチプチや断熱フィルムの貼り付けに比べれば多少手間はかかりますが、ホームセンターで購入できるものだけで自作でき、コストに関してもプラダン自体が決して高いものではないため、ほかに必要となるレールやテープなどを合わせても1箇所1万円以内で十分作成できます。
デメリットとしては、あくまで腰高窓など内窓が付けられるような窓に限定されるため、掃き出し窓のような大きな窓の断熱対策にはならない点が挙げられます。
設置してみたいという方は、Youtubeなどに作り方をわかりやすく解説している動画が多く上がっていますので、そちらを参考にしてみてください。なお、最近ではホームセンターなどで専用キットが販売されていることもあります。
ハニカムシェード
窓の内側に設置する断熱アイテムとして最後に紹介したいのが「ハニカムシェード(ハニカムスクリーン)」です。
ハニカムシェードとは、断面が六角形のハニカム構造になった不織布製のロールカーテンです。
ハニカム構造が窓と部屋の間に空気の層を作り、断熱・遮熱効果を発揮します。夏には屋外からの熱気の流入を、冬には室内の暖気の流出を防げるので、冷暖房の効率を高め省エネにもなります。
ハニカムシェードのメリットは、ハニカム構造による断熱効果の高さや洋室にも和室にもなじむデザイン、ブラインドやロールスクリーンのように可変式である点などが挙げられます。
コスト面に関しては、これまで紹介した断熱アイテムやプラダン二重窓と比べると高くはなりますが、DIYの知識がある方であれば本体をインターネット通販などで購入し、自分で取り付けをするといったことも可能です。
「大掛かりなリフォームをするほどではないが、ある程度長い目で見たときに必要な寒さ対策を取りたい」といった場合に最適なアイテムだと言えます。
窓リフォーム
ここまで主に自分でできる窓の寒さ対策を紹介してきましたが、やはり理想はプロに有効策を施してもらうことです。
内窓の設置や非常に優れた断熱性能を有する「トリプルガラス樹脂サッシ」への交換など本格的な窓リフォームを行うことで、高い断熱効果が期待できます。
費用はかかりますが、断熱に詳しい専門家に家全体を見てもらうことで窓以外の断熱対策についてアドバイスや提案をもらえる点もメリットです。
ここまで見たように窓一つとってもさまざまな寒さ対策があります。
暖房器具を新たに購入することで家の中を「暖める」ことも大切ですが、家の中の熱を「逃さない」また外部の冷たい空気を中に「入れない」といった工夫も寒さ対策として非常に効果的です。
暖房だけでは部屋が思うように暖まらないという方は、ここで紹介した窓断熱の方法をぜひ参考にしてみてください。
これから家を建てる人は断熱性と気密性を軽視してはならない
一度家を建ててしまうと、本格的な断熱リフォームはどうしても大掛かりなものになってしまいます。
寒さ対策として効果が高い断熱材を追加するにしても、床や天井を剥がしたり、壁を作り直したりしなければいけない可能性もあります。
また、断熱材を追加する分、部屋面積が小さくなってしまったり、外断熱を施す場合は庭に影響が及んだりすることもあるのです。
したがって、これから家を建てようと考えている方は、あらかじめ断熱性や気密性を重視した家づくりを行うと良いでしょう。なお、優れた断熱性・気密性を確保することは、冬の寒さ対策だけでなく夏の暑さ対策としても有効です。
2025年4月以降は断熱等級4が最低等級に
「断熱性の優秀さは具体的にどこで判断すれば良いの?」という疑問を持つ人もいると思います。
断熱性を判断するための基準の一つが「断熱等級」です。
断熱等級は、国土交通省が定める「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で規定されており、UA値という具体的な数字によって分類されます(※UA値は低いほど良い)。
2023年時点で断熱等級は1から7までの7段階に分けられ、1が無断熱、7が最高等級となっています。なお、住宅の省エネ性能に関しては今後大きな動きがある予定で、2022年まで最高等級として扱われていた断熱等級4が2025年4月からは最低等級になります。
さらに2030年には断熱等級5が最低基準になる予定です。つまり、断熱性能が低い家はもうすぐ建てられなくなるのです(※)。
また、住宅購入した方の多くが利用する住宅ローン控除に関しても、2024年1月からは省エネ基準に適合しない新築住宅(断熱等級3以下)は控除が原則受けられなくなります。
※参考:省エネ住宅とは・発足理念
こうした流れから多くの住宅メーカーは断熱性能の向上に努めていますが、ローコストメーカーの中には断熱性を重視しない家づくりを行っているところもまだあるのが実情です。
価格の低さは大きな魅力の一つではありますが、先々のメリットを考えるのであれば、マイホーム購入の際には断熱等級を決して軽視しないようにしましょう。
気密測定をおこなう家づくりは信頼できる
家の断熱性を判断するものとして、断熱等級のほかにC値(相当隙間面積)があります。
C値は住宅の気密性を数値化したもので、単位は「c㎡/㎡」と表記され、1平方メートルあたりの隙間面積を示します。
値が低いほど隙間が少なく、高気密であることを示す重要な指標です。
なお、国としての明確な基準はないものの一般的な住宅ではC値が10c㎡/㎡、省エネ基準を満たす住宅で5c㎡/㎡程度と言われています。
C値は、設計時に仕様や計算で数値を求める断熱性能とは異なり、現場における気密測定で実測できるものです。
測定は専門的な装置を使用し、住宅が完成した後、または施行中に行われます。
実際の気密測定の様子
この気密測定は気密性の確認はもちろんですが、実は家づくりの丁寧さを測る指標にもなりえます。
いくら性能に優れた建材や設備を使用していても、施工がいい加減であれば、家には隙間が生じるものです。
実際の現場で気密測定を行うということはそのようないい加減な施工が許されない、つまり細部にまで気を配った家づくりを行うことの証しとなります。
まとめ
家の寒さ対策を行うことは、暮らしの快適性だけでなく健康面や経済面にも大きなメリットがあります。
本記事では、寒い家を暖かくする方法について寒さの原因や寒さが引き起こすさまざまな問題に触れながら、熱の出入り口になりやすい窓に焦点を当て、今すぐにできる寒さ対策からDIYやリフォームによる対策まで紹介しました。
また記事後半では、新築時に重視すべき断熱性と気密性について断熱等級や気密測定に触れながら詳しく解説を行いました。
家の寒さは有効な対策をしっかりと取ることで十分に軽減できるものです。
特に高齢のご家族が身近にいる方は寒さを軽視せず、本記事を参考に最適な対策を検討してみてください。
また、これから家を建てるという方は、間取りやデザインだけでなく、断熱性や気密性といった住宅性能にも注目して住まいづくりを進めていただければと思います。
埼玉、東京西部を対応エリアとする「さいが設計工務」は、地場工務店として土地選びからアフターフォローまでマイホームの購入を全面的にバックアップしています。
特に断熱性と気密性を重視した家づくりを得意とし、UA値0.3W/㎡以下(断熱等級6)かつC値0.3c㎡/㎡以下(全棟2回の気密測定を実施)の高気密・高断熱住宅をご提供。
また、窓には非常に優れた断熱性能を有するトリプルガラス樹脂サッシ、換気システムには全熱交換タイプの第一種換気を標準採用しています。
モデルハウスでは見学の他、宿泊体験も実施していますので、説明だけでは実感しづらい住宅性能をじっくりと体感してみてはいかがでしょうか。
日高モデルハウス | 埼玉・東京都西部の高気密高断熱注文住宅なら さいが設計工務
また、自宅から気軽にモデルハウス見学が行えるVRモデルハウスも用意しています。IDやパスワードの設定は不要です。
こちらもぜひ試してみてください。
VRモデルハウス メタバース支店 | 埼玉・東京都西部の高気密高断熱注文住宅なら さいが設計工務
筆者プロフィール【ライター&ファイナンシャルプランナー:武田有】父が一級建築士であることから、幼少期から建築業界に親しみを持つ一方で、大学では数学(専門は位相幾何学)を学んだ多彩なバックグラウンドを持つ。現在はWEB業界での活動と並行して、金融から教育まで幅広いジャンルで執筆活動を展開。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格も活かし、金融分野での深い洞察も提供。一般家庭が直面する住宅関連の課題やニーズに対応する実用的なコンテンツをお届けしています。 |