
新築住宅を計画する際には、デザインや価格だけでなく健康に対する影響も考慮すべきです。
とくに冬季の急激な温度変化によるヒートショックは、適切な断熱性能を持つ家づくりで予防できます。
本記事では、ヒートショックの危険とすぐにできる対策法、そして住宅の断熱性能の重要性について解説します。
目次
・ ヒートショックを防ぐ家づくり | 断熱性能が冬の危険を予防する
・ ヒートショック対策として最も有効なのは住まいの断熱性を高めること
・ ダブル断熱
・ 断熱窓
・ 無垢フローリング
・ 光熱費が下がる
ヒートショックってなに?
ヒートショックとは、大きな温度差により血圧が急激に変動し、その結果、心筋梗塞や脳卒中が発生する危険のことを指します。住宅内におけるヒートショックは主に、暖かい部屋から冷たい部屋への移動時に起こります。
冬季の厳寒時にはとくに注意が必要です。暖房が効いた暖かいリビングから冷えた浴室へ移動し、さらに熱い湯船につかるという行動パターンはヒートショックを引き起こしやすいとされています。
なお、ヒートショックにより亡くなる方の数は明らかになっていません。
インターネット上には、年間1万人以上の方が入浴中のヒートショックが原因で亡くなっていると書かれている記事もありますが、これはあくまで入浴中の死亡者数の推計であり、転倒などヒートショック以外の原因も含まれているのが実際のところです。
しかし、冬の入浴時にヒートショックのリスクが高くなるのは間違いないでしょう。実際に、入浴時の死亡者数のデータを参照すると夏季に比べ冬季は何倍にも増えることが分かります。
東京都保健医療局「東京都23区における入浴中の死亡者数の推移」を基に作成
ヒートショックのメカニズム
ヒートショックは、主に寒暖差によって引き起こされる身体の反応で、心臓や脳への大きな負担を伴います。ヒートショックと密接な関係を持つのが体温調節のメカニズムです。
暖かい部屋から寒い浴室に移動すると、体は寒さから身を守るために血管を収縮させ、熱を逃がさないようにします。この血管の収縮は、血液の流れを制限し、結果として血圧が急上昇します。血液が必要なところに十分に届かない状態となり、これがとくに心臓や脳に大きな負担を与えるのです。
その後、熱いお湯につかると、今度は反対に体は熱を逃がすために血管を拡張します。この血管の拡張により、血圧が急激に低下します。血管の拡張により血液の流れが改善される一方、血液が心臓に戻る流量が一時的に低下するため、心臓はさらに一層頑張って血液を体全体に送らなければなりません。
つまり、暖かい部屋から寒い部屋への移動と、その後の熱湯による急激な温度変化により、血圧が乱高下し、心臓に多大な負担がかかります。体がこの急激な変化に対応できなくなると、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性があるというのが、ヒートショックのメカニズムです。
このメカニズムを理解することで、ヒートショックを予防するための行動、たとえば、温度差をなるべく小さくする、湯船の温度を適度に保つ、入浴前後の休息をとるなど、有効な対策が見えてきます。
ヒートショックのリスクが高いのはどんな人?
ヒートショックのリスクが高いとされるのは、主に65歳以上の高齢者や高血圧、糖尿病、不整脈などの持病を持つ方です。
年齢とともに体の機能が低下し、体温調節能力が落ちたり、血圧の変動に対する体の対応力が弱まったりするため、高齢者はとくにヒートショックに注意が必要です。
また、持病を持つ方も注意しなければなりません。高血圧の方は血圧の急激な変動により意識障害を起こしやすく、糖尿病や脂質異常症の方は動脈硬化や余分なコレステロールの蓄積により、血管の機能が低下し、ヒートショックによる脳卒中や心筋梗塞を引き起こすリスクが高まります。
なお、ヒートショックのリスクがあるのは高齢者や持病を持つ方に限られているわけではありません。若い世代でも、飲酒後のような血圧が急激に変動しやすい状況下では注意が必要です。とくにアルコールは血管を拡張させる作用があり、血圧を下げる可能性があるため、飲酒後の入浴はヒートショックを引き起こす可能性が高まります。
ヒートショックが起こりやすいのはいつ?
ヒートショックは、主に冬季に起こりやすいとされています。なぜなら、室内と室外、または室内の異なる部分間での温度差が大きい場合に発生しやすいからです。
とくに、家の北側に位置するトイレ、洗面所、浴室、脱衣室、玄関や廊下などは、日照が少なく冷え込みやすいため、リビングや他の暖房完備の部屋から移動する際に、ヒートショックを引き起こしやすい場所とされています。
具体的には、暖かいリビングから冷たいトイレや浴室に移動する際、体は温度差を調節しようとして血管を収縮させ、その結果血圧が上昇します。その後、温かい湯船につかると血管は再び拡張し、急な血圧低下が起こるのです。このような急激な血圧の変動が、ヒートショックを引き起こす原因となります。
そのため、冬場の入浴時やトイレ移動時にはとくに注意が必要で、部屋の温度差をなるべく小さくする、入浴前に体を温めるなどの対策が推奨されています。また、高齢者や持病を持つ人はヒートショックのリスクが高まるため、さらなる注意が必要です。
ヒートショックが引き起こす症状は?
ヒートショックは病名ではありません。身体が急激な温度変化に反応する現象のことを指します。ヒートショックによって引き起こされる病気としては、心筋梗塞や脳卒中が挙げられます。
心筋梗塞の症状は、胸の中心から全体に痛みが広がり、しばしば締め付けられるような強い圧迫感を伴うのが特徴です。一方、脳卒中は激しい頭痛、吐き気、手足の動きの鈍化やしびれなどの症状が現れます。
また、ヒートショックの影響が軽いものであれば、はじめは立ちくらみやめまいなどの症状が現れることもあります。これは血圧の急激な変動により脳への酸素供給が不十分となることから引き起こされるものです。
危険なのは、ヒートショックにより入浴中に意識を失い溺れてしまうことです。とくに高齢者や基礎疾患を持つ方はこのリスクが高く、十分に気をつけなければなりません。
今すぐできる!ヒートショック対策7選
ヒートショックのリスクを低減させるために最も効果的な対策は、住まいの中の温度差を最小限にすることです。これから家を建てようと計画されている方は、断熱性の高い家づくりを行うことで、温度差のない快適な住環境を実現できます。
また、古い家や断熱性能が低い住宅では断熱リフォームを行うことも有効です。しかし、リフォームには大きな手間と費用がかかり、すぐに実行できるとは限りません。そこで今すぐにでも実践できるヒートショック対策を7つご紹介します。
なお、毎年10月頃から翌年3月にかけて、天気予報専門メディア「tenki.jp」内でヒートショック予報というサービスが提供されます。ヒートショック予報は、日本気象協会と東京ガスの2社が共同で開発した予報で、標準的な住宅内の温度差に基づきヒートショックのリスクを「警戒」「注意」「油断禁物」の3ランク、5種類のアイコンでお知らせしてくれるものです。日本全国約1900地点の7日先までの予報を、パソコンやスマートフォンで確認できます。
ヒートショックは予防が重要です。これらの対策やツールを利用して、自分だけでなく大切な家族の健康もヒートショックの危険から守りましょう。
ヒートショック対策として最も有効なのは住まいの断熱性を高めること
前章で紹介した通り今すぐにできる対策も大事ですが、ヒートショック対策の大原則は、住宅内における温度差をなくすことです。そのためには、家全体の断熱性を高めることが重要になってきます。
断熱性を高めるための具体的な工夫としては、
- 内断熱・外断熱のダブル断熱
- 断熱性能の高い窓
- 無垢材のフローリング
- 熱交換タイプの換気システム
などが挙げられます。詳しく見ていきましょう。
ダブル断熱
一般的に、室内の壁や床、天井と外壁の間には断熱材が設置されています。断熱材とは、熱の移動を防ぐための建材です。代表的なものに、グラスウールやセルロースファイバー、ポリスチレンフォームなどがあります。
断熱材の設置方法は主に2種類あり、建物の構造体(柱など)に断熱材を設置する手法を内断熱と呼び、構造体の外側つまり外壁などとともに断熱材を設置する手法を外断熱と呼びます。
ダブル断熱とは、この内断熱と外断熱を両方取り入れた断熱方法です。設置コストはかかりますが、より高い断熱性能が期待できます。
断熱窓
住宅の断熱において熱が逃げやすい場所という観点から、窓は重要な役割を担います。窓は枠部分にあたるサッシとガラスによって構成され、断熱性を重視するのであれば「樹脂サッシ+トリプルガラス」の組み合わせがおすすめです。
無垢フローリング
冷えは足元からと言われるように、床材の種類も寒さ対策には重要なポイントです。
一般的に住宅の床材には集成材を使った合板(複層)フローリングが採用されます。コストが低く抑えられ、その硬さから傷がつきにくいというメリットがあります。しかし、断熱性を重視するのであれば、無垢材を使った無垢(単層)フローリングがおすすめです。無垢材は調湿・蓄熱性に優れているというメリットがあり、そのあたたかさは冬でも素足で生活できるほどです。
熱交換換気システム
断熱性を重視するときに忘れてはならないのが換気です。いくら断熱材や窓を工夫したからと言っても、空気の入れ替えを行う換気を軽視していると暖かい空気を逃し、冷え込んだ空気を室内に入れてしまいます。断熱住宅という観点において、おすすめするのが熱交換タイプの換気システムです。熱交換タイプとは排気の際に空気に含まれる熱を取り出し、吸気の際にその熱を冷たい空気に移すことで室内の温度を下げないようにする換気方法になります。
断熱性の指標「UA値」とは?
ここまで挙げた4つの工夫はあくまで一例で、そのほかにも住宅の断熱性を高めるポイントは色々あります。そこで、これから住宅を購入しようと検討している方が知識として持つことを強くおすすめする家全体の断熱性の指標「UA値」について紹介します。
UA値とは、家から逃げる熱の量を示す値で、数値が少ないほど熱が逃げにくく暖かいということを示したものです。「逃げる熱の量」を表す値のため、小さいほど「断熱性能が高い」と判断されます。
具体的には、室内から外皮(床や壁、天井、窓など)を通じて逃げる熱の量を、外皮面積の合計で割って求めるものです。
UA値には地域ごとに基準があります(表Aは地域区分6の断熱等級とUA値です)。
また、断熱性を確認する方法として、UA値を基準にランク付けされる断熱等級(断熱等性能等級)や一次消費エネルギー等級もよく知られた指標です。断熱等級に関しては7段階、一次消費エネルギー等級に関しては6段階に分けられています(※)。どちらも等級の数字が大きいほど住宅性能(主に断熱性)が高いことを示しています。
※2023年7月時点
表A:地域区分6(東京、大阪など)における断熱等級とUA値
なお、法改正により2025年からはすべての新築住宅に最低基準として断熱等級4が義務付けられることになりました。
断熱等級4に満たない場合は、住宅ローン「フラット35」が受けられないなど、制約が生じる可能性があるため、これから住宅を建てようと考えている方は十分に注意が必要です。
さいが設計工務の断熱性能基準
「さいが設計工務」ではUA値0.30W/㎡K以下、断熱等級6、一次エネルギー消費量等級6を標準性能として、新築住宅を提供しています。とくに標準採用する建材や設備については、断熱性を重視した選定を行っています。
ヒートショック対策には断熱性だけでなく気密性も重要!
温度差を作らないという点では住宅の気密性も重要です。気密性とは「住宅の隙間をできるかぎりなくすことによって、室内と室外の空気の流れを防ぐ性能」を指します。
気密性を数値で示すのがC値という指標です。単位は「c㎡/㎡」と表記され、1平方メートルあたりの隙間面積を表します。値が低いほど隙間が少なく、高気密であることを示す重要な指標です。C値は、設計時に仕様や計算で数値を求める断熱性能や耐震性能とは違い、気密測定で実測可能です。測定は専門的な装置を使用し、住宅が完成した後、または施行中に行われます。
なお、C値には国が定める基準が存在しません。ただし、一般的な省エネ基準の住宅のC値は5c㎡/㎡と言われています。さいが設計工務ではその目安を大幅に上回るC値0.3㎠/㎡を標準性能としており、さらに全棟2回の気密測定を実施し、気密性に関して徹底的にチェックを行っています。
高断熱住宅にはヒートショック対策以外のメリットも多い
光熱費が下がる
高断熱住宅の大きなメリットとして光熱費の削減が挙げられます。
優れた断熱性能は、暖めた空気や冷やした空気を外部に逃しません。そのため、エネルギー効率が大幅に向上し、電力やガスの消費量を大幅に減らすことが可能となります。
医療費の削減につながる
高断熱住宅は住宅内温度を適切に保つことが容易になります。
そして、住宅内温度と医療費に関する調査(※)によると、UA値が低い(断熱性が高い)住宅の方がそうでない場合と比べ、医療費が低く抑えられることが判明しています。
※参考:住宅内温度に応じた医療費推定法の提案と 医療費を考慮した経済的な住宅断熱性能の検討
室温が一定に保たれるためストレスがなく生産性も向上
断熱性の高い家では、室温が一定に保たれるため、住まいの中でのストレスが減少します。
近年の在宅ワークの普及に伴い、快適な環境下で仕事ができることは、より良いパフォーマンスと生産性向上に直結します。
家具や家電の耐久性が上がる
高断熱住宅では、優れた断熱材の使用やトリプルガラス樹脂サッシの採用により、住宅内と外部の環境が明確に分離されます。
そのため、結露が抑制され、家具や家電製品、そして住宅自体の劣化を防ぐことが可能です。
まとめ:家の断熱性を高めることがヒートショック予防への近道
本記事では、住宅内の温度差がその要因となるヒートショックの危険とその対策について紹介しました。
そして、ヒートショック対策において重要な住宅の断熱性能について詳しく解説しました。
ヒートショックという現象は、適切な対策を講じることで、予防可能なものです。
本記事の内容が、皆さん自身と大切なご家族をヒートショックの危険から守るための一助となることを願っています。
筆者プロフィール 【フリーランスライター:武田有】父が一級建築士であることから、幼少期より建築業界に親しみがあるが、自身は大学で数学を学ぶ(専門は位相幾何学)。現在はWEB業界で仕事をする一方、ライターとして金融分野や教育分野など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味のDIYや電気工事士の免許を活かし、一般の家庭が抱える住宅の悩みや要望にお答えするコンテンツを提供します! |