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バリアフリー住宅とは?代表的な設備や新築時に考慮すべき点、補助金を解説

バリアフリー住宅とは、小さなお子様から高齢者の方々まで「安心・安全・快適」に生活できることを前提とした住宅のことです。

必要が生じた際にリフォームによってバリアフリー化を行うこともできますが、将来を見据えてあらかじめバリアフリー構造を持った住まいづくりを行うと先々の手間やコストが軽減されます。


本記事では、バリアフリー住宅の代表的な設備や新築時に考慮しておきたい点、補助金や優遇制度について詳しく解説します。

これから住宅を建てようと考えている方、特に老後のことまで考えておきたい人や両親との同居の予定がある方は必見の内容です。



バリアフリー構造・設備の代表例

バリアフリーとは障壁(バリア)を取り除く(フリー)ことで、高齢者や障害を持つ方々が生活しやすい環境を整えることです。

住宅におけるバリアフリー構造やバリアフリー設備の代表例には、次のようなものがあります。

玄関スロープ

玄関スロープ


木造住宅における地面から床までの高さは、一般的に50センチメートルほどです。つまり、家の中に入るためにはこの高さに段差などを設けて登らなければなりません。その際、車椅子などで室内に入りやすくするための一つの方法として玄関スロープを設置します。

なお、玄関のスロープの角度は、1/12(水平距離1メートル20センチに対し約10センチメートル上がる)以下が望ましいと言われています。となると、50センチメートルを登るためには、単純計算で6メートルものスロープが必要です(※)。

このように玄関スロープの設置には一定のスペースが必要となるため、敷地面積の関係でどうしてもスロープの設置が難しい場合は、手すりの設置で対応する場合もあります。

※玄関に入ってからの「上がり框(あがりまち)」の高さも考慮するため、実際には玄関スロープの長さは短くなります。

段差の解消

住宅の段差解消


高齢者などがつまずいてけがをしないように自宅の段差を解消する、または低減することはバリアフリーの代表的な例です。


玄関スロープの設置も段差解消の一例ですが、敷居など室内の小さな段差の解消も大切です。

特にトイレや浴室など給排水設備が絡む場所は給排水管を通すためのスペースが必要な都合上、段差が作られやすい箇所になります。


すでに段差がある場合は、段差解消のための見切り材を設置するか、リフォームなどを行うと良いでしょう。

通路(廊下)の幅

住宅の廊下


車椅子で生活する際に通路、特に廊下の幅は重要な問題です。


一般的に廊下の幅(壁から壁の幅)は75〜80センチメートルです。一方、車椅子の幅は、JIS規格で決まっており、手動車椅子は630mm(63センチメートル)以下、電動車椅子は700mm(70センチメートル)以下となっています。


一般的な廊下でも通れないことはありませんが、特に電動車椅子の場合、幅がぎりぎりで間取りによっては曲がりきれないようなケースもあるかもしれません。

車椅子の利用を考えたときの理想の通路幅は90センチメートルほどだとされています。


これからバリアフリーに配慮した住宅を建てようと考えている方は、廊下の幅を広めに取るか、そもそも廊下をできるだけ設けないような間取りを検討するのも良いでしょう。なお、リフォームの場合、廊下は建物の構造に直接関わっていたり配線などもあったりするため、比較的大掛かりな改修工事が必要になるケースもあります。

手すりの設置

手すりと杖


手すりの設置は必要が生じてからもリフォームで対応しやすく、かつ効果が高いバリアフリー化です。玄関の段差を乗り越えるため、またすべりやすい浴室や座る動作のあるトイレなどで特に必要とされます。

スペースの関係上、スロープが設置できない箇所でも手すりの設置はできることも多く、代替案としても優秀なバリアフリー設備です。

ヒートショック予防対策

浴室と洗面所の温度差を感じる男性


目に見えるバリアフリー化が注目されることが多いのですが、断熱性や気密性を高めることもバリアフリーの大切な要素です。

特に高齢者の場合は、ヒートショック予防が欠かせません。


ヒートショックは、急激な温度変化によって血圧が大きく上下し、健康被害を引き起こす状態です。

浴室やトイレなど周りとの温度差が大きい箇所には暖房設備の設置を検討すると良いでしょう。また、断熱リフォームを行うなど建物自体の断熱性や気密性を高める工夫も効果的です。


関連記事:ヒートショックを防ぐ家づくり | 断熱性能が冬の危険を予防する


このほかにも、照明・コンセント位置の工夫や車イスで使用できるキッチン、バリアフリー対応トイレ、介護しやすい浴室などバリアフリー化を行うにあたって検討したい項目は多く存在します。

バリアフリー住宅のメリット

家族団らんの風景


バリアフリー住宅の主なメリットには、次のようなものがあります。

高齢者や障害のある方々が安心して暮らせる

住宅内には転んだりぶつかったりする原因となるものが多く存在します。

健常者であれば咄嗟の動きでこれらの危険を回避できますが、身体に何らかの不自由があると大きなケガや場合によっては生命の危機に繋がりかねません。

身体に不自由があっても慣れ親しんだ自宅で快適に暮らしていくためにも住宅のバリアフリー化は重要です。

介護をする方にとっても介護がしやすい

バリアフリー住宅には、介護を受ける方にとってはもちろん、介護や介助を行う方にとってもメリットがあります。

たとえば、家の中の段差が少ないので、歩行の介助をする場合も少ない負担でできます。また、手すりの存在によって入浴や排泄、起居動作といった動きもスムーズです。


バリアフリー住宅は、介護を必要とする人だけにやさしい住宅ではありません。

世代に関わらず、生活する家族全員にとっても安心・安全で暮らしやすい住宅です。

突然の事態にも対応しやすい

事故や病気で突然身体に障害を負うことは十分に考えられます。

完全なバリアフリー住宅とはいかなくても、あらかじめバリアフリーに配慮した住宅設計にしておくことで、自宅での生活が不可能という事態を避けられるかもしれません。

また、追加のリフォームが必要となった場合もスムーズにいく可能性が高まります。

バリアフリー住宅のデメリット

パソコンや電卓を使い計算をしている様子


バリアフリー住宅の主なデメリットには、次のようなものがあります。

コストがかかる

バリアフリー化には当然それ相応のコストがかかります。

リフォームの場合、介護保険や自治体の補助金制度の利用で負担を軽減できます。

また、最近は新築住宅においても段差のない設計を標準仕様にするなど、バリアフリーに配慮した住まいづくりが広まっています。

広い敷地が必要なケースも

バリアフリー住宅には、十分な敷地面積が必要です。

車椅子が通れる幅はもちろん、介助者が一緒に使えるくらいの広さを確保しなければならず、予算オーバーになることも。


家づくりの際は、将来のバリアフリー化のことも考慮し、玄関やトイレ、浴室など生活に欠かせない場所には余裕のあるスペースを取っておくことをおすすめします。

大手ハウスメーカーでは対応できない項目もある

住宅のバリアフリー化は一律にこうすれば良いというものではなく、各家庭の状況に合わせて柔軟に対応すべきものです。

大手ハウスメーカーには将来のバリアフリーに配慮した住まいづくりを行っているところも多いのですが、住宅という商品がある程度パッケージ化されているため個々の細かな要望には応えられないこともあります。

一方、自由度の高い住まいづくりを得意とする地方工務店であれば、各家庭の希望に合わせてバリアフリーの工夫をおこなってくれることも多いでしょう。

新築時に考慮しておきたい5つのバリアフリー要素

設計図を指し示しながら議論する様子


これから家を建てようと考えている方は、完全なバリアフリー住宅でなくとも、あらかじめバリアフリーに配慮した住宅を作っておくと、バリアフリー化の必要が生じた際のリフォームに関わる手間やコストが軽減されます。


本章では新築時に考慮しておきたい5つのバリアフリー要素をご紹介します。

1. 広さ

バリアフリー住宅において「広さ」は最重要項目と言えます。

なぜなら、この後紹介する「高さ」や「段差」はいざとなればリフォームでの対応もできますが、廊下の幅や玄関の広さなどは建物自体の構造に関わってくるため、簡単に調整するというわけにはいかないからです。


たとえば、一般的に廊下の幅(壁から壁の幅)は75〜80センチメートルです。

一方、車椅子の幅は、JIS規格で決まっており、手動車椅子は630mm(63センチメートル)以下、電動車椅子は700mm(70センチメートル)以下となっています。

車椅子が通れる幅は確保されていますが、Uターンなどの動作や取り回し、利便性のことを考えれば、もう少しスペースがあっても良いところ。


家の構造や耐震性の確保の観点から難しいケースもありますが、玄関や廊下、浴室、トイレなど生活する上で欠かせない場所のスペースは大きく取っておくのもおすすめです。

2. 段差

「段差」の解消はバリアフリーの代名詞とも言える要素です。

日本では防湿の観点から地面と床の間にスペースを取ることが一般的です。

また靴を脱いで生活する文化などからも、家の中に入るまでに一定の段差が存在します。


さらに住宅内では古くから敷居と呼ばれる段差があるように、部屋ごとに段差が設けられているケースも少なくありません。

現在は引き戸が主流になっていることもあり、以前に比べ大きな段差は減少していますが、新築住宅を建てる際には段差をできるだけなくしておくと住宅内の転倒事故を防ぐことに繋がります。


なお、床の冷え防止のためにカーペットやマットなどを敷くケースもありますが、敷いたことによって生じる小さな段差がつまずきや転倒の危険に繋がることがあります。

保温効果の高い床暖房や無垢フローリングを導入することで、カーペットなどを使用しなくても良い住まいづくりをおこなっておくのも良いでしょう。

3.高さ

キッチンや洗面台の「高さ」を低めにして車椅子でも作業しやすいようにしておくこともバリアフリー要素の一つです。

ただし、身体に不自由がない状態で使いづらいようでは意味がありません

設備系のバリアフリー化は入れ替えやリフォームで対応しやすいため、本格的な検討は必要が生じた際に行えば良いでしょう。


新築時には、照明のスイッチ位置を少し低くしておく、低い位置に収納を多めに設置しておくなど、快適性を損なわない工夫を行っておくことをおすすめします。

4.断熱性・気密性

高齢者や障害者の方々が快適に暮らせるバリアフリー住宅において断熱性・気密性は非常に重要です。

特に高齢の方にとって家の中の大きな温度差は、ヒートショックを引き起こす原因となります。


暖房器具の設置は対策の一つではありますが、スイッチを付けにいく手間や消し忘れのリスクを考えると、新築時に高気密・高断熱の住まいづくりをしておくことがより効果の高いヒートショック対策となります。

5.緊急時用のエネルギーの確保

災害が起こったとき、高齢者や障害者の方々は避難が遅れる、または避難自体が不可能というケースもあるかもしれません。

中には自宅で酸素吸入機など医療機器を導入している場合もあるでしょう。

そういったときに最低限のエネルギーを確保できるかどうかはその後の生命を左右します


太陽光発電や蓄電池の導入、また最近では非常時に給電できる機能を備えた自動車も販売されており、新築時にはこれら緊急時のエネルギー確保について検討しておくと良いでしょう。

バリアフリーを重視するなら平屋という選択肢も

平屋住宅の外観と青空


バリアフリーを重視するなら、平屋という選択肢もあります。平屋のメリットは次のとおりです。

  • 室内をフラットに設計することで段差をなくせる
  • 生活に必要な設備や部屋がワンフロアにあるため動線がスムーズ
  • 家族が顔を合わせやすくなる
  • 光熱費やメンテナンス費用を安く抑えられる

一方、平屋のデメリットは次のとおりです。

  • 2階建てよりも広い土地が必要になることが多い
  • 2階建てに比べ税金が高くなる傾向にある
  • 日当たりやプライバシーの確保に工夫が必要

平屋は、小さいお子さんがいる家庭はもちろん、高齢の家族がいる場合やけがや病気などで体が不自由になった場合にも快適な暮らしを実現できる住まいの形の一つです。

バリアフリー住宅の補助金と優遇制度

住宅をバリアフリー化するためには大きな費用負担が生じる場合もあります。そのため、国や地方自治体などは補助金や優遇制度を用意しています。

介護保険制度の利用(高齢者住宅改修費用助成制度)

多くの方が使える制度として代表的なものが「介護保険」です。

バリアフリー化の工事は、介護保険制度の中にある住宅改修(介護リフォーム)に該当し、申請を行えば住宅改修費の9割相当額が償還払い(※)で支給されます。

なお、支給額は、支給限度基準額(20万円)の9割(18万円)が上限となります。

※いったん費用の全額を立て替え、後の申請により規定の額が払い戻される仕組み


支給対象となる工事は、次の6つです。

  1. 手すりの取り付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

出典:介護保険における住宅改修


原則として介護保険による住宅改修のための補助金は1度しか使えません。

また、補助金の支給を受けるためには、要介護・要支援の認定を受ける必要があります。

なお、介護保険制度のほかにも地方自治体が実施する補助金制度や「住宅特定改修特別税額控除」というバリアフリー改修工事を行った方を対象にした減税措置もあります。


バリアフリー化のためのリフォームをお考えの方は、工事着工前にお住まいの自治体の補助金や優遇制度をリサーチしておくと良いでしょう。

バリアフリー住宅は金利面でお得なフラット35Sを利用できる可能性あり

【フラット35】Sの金利引き下げ期間と金利引き下げ幅の表


住宅のバリアフリー化に関する補助金や優遇制度はリフォームを対象にしたものが多く、残念ながら新築時に利用できるものは限られてしまいます。


新築時に利用できる優遇制度として代表的なものが【フラット35】です。

【フラット35】とは、住宅金融支援機構が提供する「全期間固定金利型住宅ローン」のことです。

所定の基準を満たしたバリアフリー住宅であれば、その【フラット35】の商品ラインナップにある【フラット35】Sという金利引き下げオプションが付属したメニューを利用できます。


参考:【フラット35】S:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】

まとめ

バリアフリー住宅は要介護者と介護者、双方に負担の少ない暮らしを実現してくれる住まいです。


本記事では、バリアフリー住宅について代表的な設備や新築時に考慮しておきたい点、補助金や優遇制度について詳しく解説しました。

これらを参考に、リフォームなどを行う予定のある方をはじめ、これから新たに住宅を建てようという方もバリアフリーに配慮した住宅をぜひ検討してみてください。


埼玉県に拠点を置く「さいが設計工務」は、地場工務店として土地選びからアフターフォローまで住宅購入を全面的にバックアップしています。

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筆者プロフィール
【ライター&ファイナンシャルプランナー:武田有】父が一級建築士であることから、幼少期から建築業界に親しみを持つ一方で、大学では数学(専門は位相幾何学)を学んだ多彩なバックグラウンドを持つ。現在はWEB業界での活動と並行して、金融から教育まで幅広いジャンルで執筆活動を展開。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格も活かし、金融分野での深い洞察も提供。一般家庭が直面する住宅関連の課題やニーズに対応する実用的なコンテンツをお届けしています。


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