
高低差のある土地とは、前面道路や隣地よりも高い位置にある、または低い位置にある土地のことです。がけ地や坂の途中にあるような高低差の大きな土地もあれば、目視ではほとんど高低差が認められない、しかし建築時には何かしらの対策が必要という土地もあります。高低差のある土地はおおむね平坦な土地と比べて販売価格が低い傾向にあるのですが、安さだけに惹かれて購入してしまうと、いざ家を建てようという段階になったときに後悔するかもしれません。
本記事では、高低差のある土地のメリット・デメリットやリスク、安全確保のために必要な工事の種類とその費用などを深掘りして解説します。高低差のある土地の購入を検討されている方必見の内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
高低差のある土地はお値打ち?
たとえば東京には約900以上もの坂があるといわれており、高低差のある土地に建つ家も目にする機会も多いのではないでしょうか。
一般に高低差のある土地は、そうでない平坦な土地と比べて販売価格が低い傾向にあるとされています。
安さには理由がある
そもそも土地の価格は、国土交通省が毎年3月に発表する「公示地価」や、土地の売買が成立したときの価格である「実勢価格」などの基準によって決まります。同じエリアの同じような条件の土地であれば、価格に大きな差はないのが一般的です。
そのなか、高低差のある土地は平坦な土地と比べて低価格で販売されているケースがあります。
理由は一つではありませんが、高低差のある土地にはデメリットやリスクがあり、その分価格が低く抑えられているケースが多いでしょう。
たとえば、石積みの古い擁壁(※)の上にある土地が、周辺の土地よりも500万円程度安く売られていたとします。
擁壁もすでにあり、高低差があるというだけで500万円も安くなるのであればお得だと思うかもしれませんが、こういった土地の購入は慎重になるべきです。
たしかに擁壁は存在していますが、その擁壁が古い場合、現在の法令内容を満たしておらず、そのままではその土地に新たな家を建てられないかもしれません。
そういった場合は擁壁の再設置工事をおこないますが、その費用は数百万円から場合によっては1千万円を超えることもあります。
いくら土地を安く購入できたからといっても、家を建てるために必要な工事に多額の費用がかかるようであれば、決してお得な買い物とはいえないのです。
※擁壁は、高低差のある土地やがけなどで、土が崩れるのを防ぐために設置されるコンクリートブロックや石などを使用した壁状の構造物です。がけなどの崩壊を防ぐための土留めとしての役割があります。
高低差のある土地のメリット
高低差のある土地を購入する際は注意が必要と前章で述べましたが、高低差のある土地にはメリットも多く存在します。
販売価格の低さ
安く販売されている土地には注意が必要と述べましたが、やはり低価格で購入できる点は高低差のある土地最大のメリットです。
それでは一体なぜ高低差のある土地は、平坦な土地に比べて販売価格が低く購入できるのでしょうか。その理由として次のものが考えられます。
- 土地の形状が複雑で整地に手間がかかるため
- 建物の配置や構造に制約が生じるため
- 景観や環境面でマイナスのイメージがあるため
高低差のある土地は、土地整備のための工事費用がかかったり建物の建築コストが高くなったりする傾向にあります。また高低差があることを嫌がる人も多く、需要の低さから価格が下がりやすいといった理由もあるでしょう。
高低差のある土地は、工夫の仕方によっては平坦な土地を購入するよりもトータルコストを抑えられるかもしれないため、予算を抑えて土地を購入したい方におすすめです。
見晴らしの良さ
高低差のある土地は、周囲の建物や景色を遮るものが少ないため、見晴らしが良く開放感を得やすいというメリットがあります。
とくに山や海など自然に囲まれた土地は、眺望が素晴らしくリラックスした時間を過ごせます。また高低差によって、風通しが良くなったり太陽光を採り入れやすかったりするなどのメリットも、生活するうえで大切なものです。
プライバシー保護
高低差のある土地は、前面道路よりも高い位置に建物を建てることで目線がずれ、道路から家の中を見られにくくなります。
また、周囲の土地よりも高い位置に建てることで、隣地からの視線も遮ることもできます。そのため、プライバシー保護を重視する方にもおすすめです。
高低差を活かした家づくり
高低差のある土地は、高低差を活かした家づくりを楽しむこともできます。
たとえば、リビングを2Fに配置して大きな窓を設置することで眺望を楽しめるようにする地下室やガレージを設ける段差や階段を活かしたデザイン性の高い家にするなど、さまざまなアイデアが考えられます。
高低差のある土地のデメリット
次に高低差のある土地のデメリットについて、さまざまな視点から紹介します。
基礎工事や擁壁工事のコスト発生
高低差のある土地は、平坦な土地に比べて基礎工事や擁壁工事が必要になるケースが多く、その分コストがかかります。
基礎工事では、地盤の強度や高低差の程度によって、基礎の作り方に工夫が必要となるかもしれません。
また擁壁工事では、高低差解消や安全確保のためにコンクリートやブロックなどで壁を築く必要があります。
これらの工事には、事前調査や専門の技術が必要となり、相応の費用負担が生じます。
外構工事のコスト増
高低差のある土地では、外構工事のコストも上乗せされるかもしれません。
たとえば、段差を解消するために階段やスロープなどの整備が必要となる場合や、高低差を活かしたデザイン性の高い外構を施す場合などです。
これらの工事には、通常の外構工事よりも手間や費用がかかります。
家づくりの長期化
高低差のある土地では、基礎工事や擁壁工事などの工事に時間がかかるため、家づくりの期間が長期化しやすい傾向にあります。
高低差を活かしたデザイン性の高い家を建てる場合も、設計や施工に時間がかかるでしょう。
なお、問題なく家を建てられるだろうと思って購入した高低差のある土地を、いざ工務店の建築士に見てもらったところ、実は追加工事の必要があり、その工事に膨大な時間やお金がかかるようなケースもないとは言い切れません。
災害リスク
高低差のある土地は、場合によっては災害リスクが高くなるかもしれないというデメリットもあります。
たとえば、地震などの災害が発生した場合、高低差によって被害が拡大する可能性があります。
また、がけ崩れなどの災害が発生した場合、家が倒壊する危険性も考えられるでしょう。
一方、洪水が起こった場合などは、高低差があることでむしろ浸水しにくいようなケースも考えられます。高低差のある土地を購入する際には、災害リスクについてもあらゆる観点から十分に検討しておくことが重要です。
高低差のある土地に家を建てる際に必要な工事
高低差のある土地の購入を検討する場合、その後必要となるかもしれない追加工事についてよく考えておかなければなりません。
造成工事
造成工事とは、土地の形状を整えるための工事です。高低差のある土地に家を建てる際には、高低差を埋めたり、傾斜をなだらかにしたりするなどの造成工事が必要になります。
高低差のある土地でおこなわれる造成工事には、たとえば次のようなものがあります。
<造成工事の一例>
切土:高いところの土を掘り下げて低いところの土を埋める工法
盛土:低いところの土を盛り上げて高いところの土を埋める工法
埋め立て:低いところの土を埋めて平坦にする工法
造成工事はおおむね平坦な土地に家を建てる際にも必要な工事ですが、高低差のある土地の造成工事は平坦な土地の工事に比べて、より多くの手間と費用がかかる傾向にあります。
基礎工事
基礎工事とは、地面と建物をつなぐ根幹となる基礎をつくるための工事です。
高低差のある土地に家を建てる際には、地盤の強度や高低差の程度によって、深基礎という高低差のある土地向けの基礎工事がおこなわれるケースが多々あります。
深基礎は土地の傾斜や高低差の解消のためによく用いられる手法で、土留めの役割も果たすため、深基礎をつくることによって擁壁の設置が不要になるという事例もあります。ただし深基礎の設置工事は、通常の基礎工事に比べて費用が高くなる点には留意しておきましょう。
擁壁工事
擁壁工事とは、高低差を解消するために、コンクリートやブロックなどで壁を築く工事です。
高低差のある土地に家を建てる際には、高低差によって生じる崩落や斜面の崩壊を防止するために、擁壁工事が必要になる場合があります。
深基礎の設置工事などで代用する方法もありますが、高低差の解消のためにどのような対策をすべきかは建築士など専門家の判断を仰がなければなりません。
なお、擁壁工事の費用は擁壁の規模や構造によって大きく異なるため一概にはいえませんが、数百万円から場合によっては1,000万円以上かかる場合もあります。
外構工事
外構工事とは、建物の周囲の環境を整えるための工事です。
高低差のある土地に家を建てる際には、段差を解消するために階段やスロープなどの整備が必要となる場合や、高低差を活かしたデザイン性の高い外構を施す場合などがあります。
外構の規模や内容によって一概にはいえませんが、高低差のある土地の外構工事費用は、おおむね平坦な土地の工事費用と比べて高額になるケースが多いでしょう。
このように、高低差のある土地に家を建てる際には、土地整備のための追加工事が必要になるケースが多く、その分費用や工期がかかります。
また、このほかにも高低差があることで給排水の配管に工夫が必要になったり、高低差が原因で工事に使う重機を持ち上げる必要があったりする場合は追加費用がかかります。
土地自体の価格が安いからといってもトータルコストが一体どの程度になるかは、素人判断ではなかなか難しいところです。ハウスメーカーや工務店に相談しながら土地選びをおこなうのがベストでしょう。
【重要】高低差のある土地を購入する場合の注意点
本記事で解説した高低差のある土地のメリットやデメリット、必要となる工事などを考慮したうえで、高低差のある土地を購入する際の注意点をまとめてみます。
安いからといって安易に購入を決めない
高低差のある土地は、購入価格が平坦な土地に比べて安い傾向にあります。
しかし、安いからといって安易に購入を決めるのは危険です。
高低差のある土地は、造成工事や擁壁工事などの費用がかさむ傾向にあるため、トータルで見ると平坦な土地よりも高くなる可能性もあります。
また、場合によっては災害リスクも高くなるため、家族や施工会社の建築士とよく相談するなど慎重に検討する必要があります。
専門家に現地確認をお願いする
高低差のある土地の購入を考えているのであれば、建築士など専門家に現地確認してもらいながら検討するのがおすすめです。
専門家であれば、地盤の強度や高低差の程度、造成工事や擁壁工事の必要性などについて、専門的な知識と経験に基づいて判断できます。
また、災害リスクについても、専門的な視点からアドバイスを受けられます。
話だけではわからないこともあるため、建築士など専門家と一緒に購入を検討している現地に実際に赴き、直接意見をもらいながらぜひ検討してみてください。
まとめ
高低差のある土地はメリットもデメリットもありますが、しっかりと検討してから購入することが、高低差を活かした理想的なマイホームを実現するためのポイントです。
本記事では、高低差のある土地を購入する際の注意点として、見かけの安さに惑わされないことの重要性や、追加工事の手間や費用についてしっかりと考慮に入れる必要があるとお伝えしました。
高低差のある土地に家を建てるためには専門的知識が必要となる場面が必ずあります。高低差のある土地の購入で失敗しないためには、土地購入前に施工を依頼する予定の住宅会社とよく相談しながら検討を進めていくのがポイントです。
埼玉県に拠点を置く「さいが設計工務」は、地場工務店として土地選びからアフターフォローまで住宅購入を全面的にバックアップしています。断熱性や気密性といった住宅性能を重視しつつ、それぞれの予算に応じた自由度の高い注文住宅を提供しています。高低差のある土地に関するお悩みにも工務店ならではの視点から答えています。モデルハウスでは見学の他、宿泊体験も実施していますので、説明だけでは実感しにくい住宅性能をじっくりと体感してみてはいかがでしょうか。
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筆者プロフィール 【ライター&ファイナンシャルプランナー:武田有】父が一級建築士であることから、幼少期から建築業界に親しみを持つ一方で、大学では数学(専門は位相幾何学)を学んだ多彩なバックグラウンドを持つ。現在はWEB業界での活動と並行して、金融から教育まで幅広いジャンルで執筆活動を展開。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格も活かし、金融分野での深い洞察も提供。一般家庭が直面する住宅関連の課題やニーズに対応する実用的なコンテンツをお届けしています。 |