
子どもの成長は驚くほど早く、その変化に合わせて考える家の間取りは悩みの種になりがちです。特に、子ども部屋は「早くから用意してあげたいけど、こもりがちになったらどうしよう」「今のところ2人目は計画していないけど、念のため子ども部屋を2つ用意しておきたい」など考えるべきことがたくさんあるかと思います。
本記事では、そのような悩みを抱える方に向けて子ども部屋の選択肢の1つとして、あとから「間仕切り」を設置して2部屋に分けることが可能な子ども部屋を紹介します。さらに、DIYによる間仕切りアイデア、はじめから子ども部屋を分けておくべきケースなどについても解説します。
子ども部屋の間取りについて悩まれている方の参考になれば幸いです。
目次
・ 自由設計で叶える子ども部屋の柔軟な間取り!【仕切りなし→仕切りあり】に後から変更できるユニークな子ども部屋とは?
・ 将来的に2部屋にスムーズに分けられるようにあらかじめ設計しておくことがポイント
・ ネントレ(ねんねトレーニング)などの実践を考えており、幼児のうちから子ども部屋を与えたい
・ ネントレとは?
理想的な子ども部屋をつくることは案外難しい!
子ども部屋の設計は家づくりの大きな課題です。子どもが快適に過ごすスペースを提供しつつ、適度なプライバシーを保ち、親子のコミュニケーションも維持したい。さらに、子ども部屋を用意したことで「こもりがち」にならないかという心配なども頭をよぎることでしょう。
また、子ども部屋の考え方自体が時代とともに変わりつつあります。たとえば、勉強の場は子ども部屋だけでなく、共有のリビングスペースに子どもの学習スペースを設けるなど、オープンで柔軟性のある空間作りが求められています。様々な要素をバランスよく取り入れることは、想像以上に難しいかもしれません。
子ども部屋を作るにあたって決めなければならないことはたくさんある
子ども部屋を設計する際には、多くの要素が絡み合って間取りなどの決定が難しくなることが多々あります。子ども部屋の数や広さはもちろん、安全面やプライバシーへの配慮、そして将来的な利用方法まで、幅広い視点から検討することが重要です。
・子ども部屋は本当に必要か
・子ども部屋の数と間取り
・何歳から個人の子ども部屋を用意するのか
・安全面(窓の位置やロックなど)
・必要な収納スペース
・学習環境の設計
・明るさや色などのデザイン要素
・プライバシーの尊重
・子どもが巣立ったあとの部屋の利用方法
これらのポイントは一概に「これが正解」とは言えません。各家庭のライフスタイルや価値観によって、最適解は異なるのです。子ども部屋の設計はただ部屋を作るだけでなく、子どもの成長と家庭の生活スタイルを反映した形で設計することが求められます。
子ども部屋は何歳から用意するのが一般的なのか
出典:PR TIMES「子どものための住まい探しに関する調査」
アットホーム株式会社が実施したアンケートによると、子ども部屋を準備する一般的な年齢は、実際と理想、両方の観点から小学校低学年がもっとも多いようです。また、0歳から5歳の間に子ども部屋を準備する家庭も約30%と一定の割合を占めていることが分かります。
しかし、これはあくまで一般的な傾向です。たとえば、新しい住宅を購入するタイミングや引っ越しをする際などに、子どもの年齢に関わらず子ども部屋を用意することも多いようです。このような判断は、それぞれの家庭のライフスタイルや子どもの成長具合によるため、一律に定めることは難しいと言えるかもしれません。
子ども部屋の存在自体に否定的な意見もある
出典:「ゼロリノベ調べ」
ゼロリノベが実施したアンケートによると、子ども部屋は必要ないという意見も一定数あるようです。
子ども部屋を作ることは一見理想的に見えますが、親の目が届かなくなる、子どもが部屋にこもりがちになるといった心配や不安もあると言われます。これらの問題を解消するための方法として、「子ども部屋は寝るためだけの空間とし、学習はリビングなどの共有空間で行う」、「子ども部屋から玄関へ移動する際には必ずリビングを通るような間取りにする」といった考え方もあります。
埼玉県に拠点を置く「さいが設計工務」では、こうした心配事を解消しつつ、住宅全体のバランスを保つ子ども部屋の間取りについて、お客様1人ひとりの生活スタイルに合わせた最適な提案を目指しています。
子どもの成長に合わせて変化する子ども部屋とは?
子どもたちは年齢と共に成長し、それぞれの成長段階において異なる希望やニーズがあります。一般的に、「恥ずかしい」という感情は3歳頃から芽生えるとされているようです。そして、9歳から10歳頃には自立心が本格的に芽生え、自分のプライベートな空間を欲するようになります。
このような子どもの成長に応じて、おすすめなのが「成長に合わせて間取りを変化させることができる子ども部屋」です。
あとから間仕切りを設置できる子ども部屋
施工事例「子どもの成長に合わせて間取りを変えられる子ども部屋」| さいが設計工務
たとえば、子どもが生まれていない段階や、まだ個々の部屋を必要としていない小さな子どもだけの場合、2部屋分の子ども部屋に、はじめはあえて間仕切り壁を設けず1つに繋げておきます。
子どもたちが小さいうちは広々とした遊びや学習の場として提供し、そして成長と共にプライバシーを重視した個室へと変えていきます。このように、子ども部屋の成長に応じて部屋の間取りを変化させることで、子どもたちの心地よい空間を長期的に提供できるのです。
将来的に2部屋にスムーズに分けられるようにあらかじめ設計しておくことがポイント
部屋は左右対称のつくりになっており、扉も2カ所設置しています
子ども部屋の設計に際しては、成長と共に使い方が変化する子どもたちのことを考えて、将来的に2部屋に分けることを前提とします。そのために、はじめから部屋のレイアウトや各種設備の位置を2部屋として想定し設計することが大切です。
具体的には、部屋を分けた際にそれぞれの部屋に必要な設備が適切に設置されるように、扉の数、コンセントや照明の位置、窓の配置、壁下地の位置などを計画します。これにより、将来部屋を分けるときに必要な改装が最小限になり、時間とコストの節約にもつながります。
もちろん、ここで紹介している間取りはあくまで一例であり、実際は家庭の状況や生活スタイルなどに合わせて、間取りを決めていく形がベストです。お子様の年齢や兄弟姉妹の性別、それぞれの性格などによって最適な子ども部屋は変化するものです。
なお、埼玉県に拠点を置く「さいが設計工務」では、子ども部屋以外にも、自然素材の利用や高気密・高断熱、優れた換気システムなど、子育てに適した住宅を作るための工夫を積極的に取り入れています。モデルハウスでは宿泊体験もでき、その住宅性能を実際に体感することも可能です。
「あとから間仕切りを設置できる子ども部屋」のメリット
はじめはあえて間仕切りを設けず、2つの子ども部屋を1部屋として繋げておくことには、多くのメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
子どもの成長に合わせて最適な部屋を用意できる
子ども部屋の利用法はその成長に伴って大きく変化します。たとえば、就学前の子どもたちにとって、部屋はおもちゃで遊ぶ場所であり、兄弟や姉妹と一緒に楽しむという使い方が適しています。このため、間仕切りを作らずに広い空間を確保することで、自由に遊べる開放的な環境を提供できるのです。
また、小学生の段階になると、子どもたちは自立心を持ち始めます。自分の持ち物を管理する場所、自分だけの寝室が必要になる時期でもあります。子どもの方から自分の部屋が欲しいと希望してくることも少なくありません
さらに、中学生・高校生になると、受験勉強に集中するための静かな空間が必要になります。それまで以上に独立した子ども部屋が求められるでしょう。
将来的に2部屋に分けられる大きな子ども部屋は、このような成長過程での変化にスムーズに対応することが可能です。
子どもが思いっきり動き回れる場所になる
子ども部屋に間仕切りを設けないことによる最大のメリットは、その「広さ」にあります。子どもたちが自由に動き回り、遊び、探求するためには、広さは大事な要素です。
子どもたちは一日中エネルギッシュに動き回るもので、その活動範囲は驚くほど広いものです。しかし、天候や周囲の環境、さらには季節の変化により、常に外で遊ぶことが可能とは限りません。その際、家の中に十分な広さの遊び場があると、子どもたちは自由に活動できます。このことは、ゲームや動画への依存を減らすことにも繋がるのです。そして、子どもたちが自由に活動的でいることは、結果として子育てにおける親の精神的負担を軽減してくれるという利点もあります。
また、最近では「動育」という教育方法も注目を集めています。これは家の中に「うんてい」や「クライミングウォール」などのアスレチック環境を用意し、子どもたちの身体能力を育む手法です。部屋を広く取っておくことで、こうした教育方法を採用することが可能になり、子どもたちはより健康的で活動的な生活を送れます。
大きな部屋ならではの趣味や遊びができる
子ども部屋が広いということは、それだけ自由度が高く多くの可能性を含んでいるということです。平均的な子ども部屋の広さは4.5畳〜6畳ほどで、ベッドや学習机、収納を置くと残りのスペースは非常に限られてしまいます。しかし、子どもが遊びに熱中する幼児期〜小学校低学年までの間は、2部屋を繋げてスペースを広くとっておくことで、子どもたちが広い空間を活用した遊びや趣味を楽しむことができるでしょう。
たとえば、プラレールや鉄道模型などは広いスペースがあればこそ、大規模なコースを作り、思う存分遊べます。また、ダンスやヨガなど身体を大きく動かすアクティビティも広い空間でなければ行えません。
さらに、子どもたちがおもちゃで遊ぶ場を子ども部屋に限定することで、リビングやダイニングをきれいに保つことができるメリットもあります。これは、子どもが食事や家族との時間に集中できる環境を作り出すことにも繋がります。
つまり、広い子ども部屋は、子どもの創造力や自由度を高めるだけでなく、家族全体の生活環境も向上させる役割を果たすのです。
家族構成の変化に柔軟に対応できる
家庭の状況はさまざまで、子どもの数や性別、年齢差などによって必要とされる子ども部屋の広さや数は変化します。特に子どもがまだいないご家庭や2人目以降を計画中のご家庭では、子ども部屋の数を決めるのが難しいかもしれません。
しかし、あらかじめ子ども部屋を2つに分けず1つの広い部屋として設計しておけば、その後の家庭の状況により柔軟に対応できます。たとえば、子どもが1人だけの場合、幼児期は遊びや運動のために広い部屋として利用します。そして、子どもが大きくなり広い部屋が必要なくなれば間仕切りを設け2部屋に分け、1部屋は子ども部屋、もう1部屋はお母さんの趣味の部屋にするなどといった使い方もできるのです。
このように将来の家族構成が未定の場合、子ども部屋に自由度を確保しておくことは大きなメリットになります
「あとから間仕切りを設置できる子ども部屋」のデメリット
子ども部屋を2つの部屋ではなく1つの広い部屋として設計することは、部屋の使い勝手や活用の自由度を大いに高めます。しかし、その一方で将来的なコストや手間については、デメリットも存在します。ここでは、そのようなデメリットについて詳しく見ていきましょう。
将来のリフォーム時にかかるコスト
子ども部屋を2つに分ける場合には、リフォームにかかるコストが無視できません。同じ間仕切り壁を新築時に作る費用とリフォーム時に作る費用とを比べた場合、後者の方が高くなるのが一般的です。なお、新築の段階で将来的に部屋を分けることを想定して壁下地やコンセント、窓などを設計しておけば、その後のリフォームが比較的スムーズに、そしてコストも低く抑えられる可能性が高くなります。
リフォームの手配や手間
リフォームを実行するとなると、業者の手配、打ち合わせ、部屋の片付けなど、それなりの時間と手間が必要になります。また。リフォーム期間中は作業員が家に出入りするため、少なからず家庭での日常生活に影響を及ぼし、心理的な負担が伴うこともあります。実際に、こういった手間やストレスが理由で、計画していた間仕切り壁の設置を見送る家庭も少なくありません。このような事態を避けるためにも、住宅購入の段階で将来のリフォームについての計画を立てておくことは重要です。
DIYで間仕切りを作るのもおすすめ
子ども部屋を仕切るためには必ずしも「壁」が必要というわけではありません。子どもたちの希望やプライバシーへの配慮にもよりますが、アコーディオンカーテンやロールスクリーン、スタッキングシェルフなどを利用して簡易的な間仕切りを設ける選択肢もあります。こうすることで、設置のコストが抑えられ、また子どもが独立した後に再び大きな1部屋として活用しやすいというメリットもあります。
また、最近ではDIYで子どもと一緒に間仕切りを作ってみるという方も増えているようです。たとえば、「ラブリコ」や「ディアウォール」といった壁や天井を傷つけずに柱を立てられる商品などを利用して、簡易的な間仕切り壁を作る方法はインターネット上でも見つけられます。以前は、このような大掛かりなDIYはハードルが高かったのですが、現在はYoutubeなどの活用により、事前知識が少なくてもDIYにチャレンジしやすい環境が整っていると言えるでしょう。また、「ラブリコ」や「ディアウォール」のようにニーズに応じた商品が登場していることもDIYの助けとなっているようです。
子どもにとって道具の使い方や木材の扱い方を学ぶことは非常に良い経験だと言えます。そして何より自分の部屋を自分で作ったという満足感はその後の人生の糧となるでしょう。
はじめから部屋を分けておく方が良いケース
ここまで、「あとから間仕切りを設置できる子ども部屋」について紹介してきましたが、子どもの年齢や家庭状況によっては、はじめから1人用の子ども部屋として分けておいた方が良い場合もあるでしょう。最後にその具体的ケースをいくつか紹介します。
すでに子どもが小学生以上
小学校入学後は、子どもが持ち物を自分で管理するようになり、また寝る時も1人というように自立心が育つ時期です。そのため、子ども自身が「自分の部屋が欲しい!」と希望する可能性も十分にあります。このような理由から、すでに小学生以上の子どもがいるような場合は、はじめから個人の子ども部屋を用意しておく方がベターだと言えます。
子どもがプライバシーを気にしている
子どもの性格によっては、就学前であっても1人の空間が欲しがるなんてこともあるかもしれません。もちろん親御さんの考え方にもよりますが、このように子ども自身がプライバシーなどを気にしている場合も早めに個人の子ども部屋を用意してみてはどうでしょうか。逆に、すごく寂しがり屋で小学校高学年になっても1人で寝るのが怖いという子どもの場合は、無理に1人部屋にしなくても良いでしょう。子ども自身の性格や成長具合に合わせることは非常に大切です。
ネントレ(ねんねトレーニング)などの実践を考えており、幼児のうちから子ども部屋を与えたい
欧米では、産まれた直後から個人の子ども部屋を与え、1人で寝かせるのが一般的という話を聞いたこともある方もいるかもしれません。日本でもネントレ(ねんねトレーニング)と言って、乳児期から1人で寝られるように欧米式の子育て方法を実践するケースもあります。このような子育て方法を実践しようと考えている場合には個人の子ども部屋の存在が重要です。そのため、家を建てる段階で子ども部屋を分けておいたほうがいいでしょう。
ネントレとは?
「ネントレ」とは「ねんねトレーニング」の略語で、主に乳幼児の就寝リズムを整えるためのトレーニングを指します。特に、赤ちゃんが夜間に安定して眠れるようになることを目指すものです。「ネントレ」の際に子ども部屋があると、子どもは自分の空間を持てるため、そこで寝ることを自然に学びます。また、子ども部屋は他の活動(食事や遊び、学びなど)と寝ることを物理的に区別するのに役立ち、それにより子どもは部屋に入ると寝る時間であることを認識するようになります。
兄弟姉妹の組み合わせ
子ども部屋を作るにあたって、兄弟姉妹の年齢差や性別の組み合わせは非常に大切になってきます。年齢差があまりなく同性の場合であれば、子ども部屋を用意するタイミングも取りやすいかもしれません。しかし、年齢が離れている、または性別が異なるような場合は、早めに個人の子ども部屋を用意しておく方が良いかもしれません。
まとめ:子ども部屋の間取りは子どもの健やかな成長を支える大切な要素の1つです
「あとから間仕切りを設置できる子ども部屋」について、実際の事例やメリット・デメリットに触れつつ、解説しました。
子ども部屋は、これから子どもが長く過ごす場所の1つです。「遊ぶ」「学ぶ」「休む」すべてにおいて快適な空間であることが、子どもの健やかな成長を助けるでしょう。
なお、本記事で紹介した内容は、あくまで選択肢の1つにすぎません。これから注文住宅を建てる方は、子どもの成長段階や希望にも応じつつ、ぜひ子ども部屋の間取りにこだわって家づくりを行ってみてください。
筆者プロフィール 【フリーランスライター:武田有】父が一級建築士であることから、幼少期より建築業界に親しみがあるが、自身は大学で数学を学ぶ(専門は位相幾何学)。現在はWEB業界で仕事をする一方、ライターとして金融分野や教育分野など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味のDIYや電気工事士の免許を活かし、一般の家庭が抱える住宅の悩みや要望にお答えするコンテンツを提供します! |